RESEARCH
『海の“チカラ”で未来はもっと素敵になる』というコンセプトをもとに,新しい価値を有する海洋建築物を提案し,その海洋建築物の実現に向けた技術的な課題の解決策を創造する研究活動を展開しています。
そして社会が「海」に対し求める価値を主軸とし,アイデアを出し,デザインを考え,検証と改善を繰り返しクオリティの高いものを生み出せる「デザイン思考」を身に付けた技術者の育成を念頭に指導します。
2019年度から新しく始まる研究室なのでOBやOGによる就職相談なども実施し卒業生も含め,皆で一緒に“楽しく”学べる研究室を創りましょう!
研究テーマ


海洋建築物のニューコンセプトの提案とその実現可能性に関する技術的な検討
東日本大震災以降,日本では新たな発電エネルギーとして海洋再生エネルギーが注目されています。しかし電力の貯蔵と輸送に課題が残されていることから,本研究では深海の静水圧を利用することで水素の圧縮コストを削減し,安全な水素の貯蔵を実現する水素生産・貯蔵システム(SHPS)などを提案しています。我々はSHPSを水深2000-4000m程度の海域に設置することを考えており,現在は電解時の電極の発熱に対する冷却システムの設計や水素を海上の浮体に送るライザーの設計などについても検討しています。
2つ目の画像は,海底と水素生産施設の上部の小型浮体を結ぶSLWR(Steel Lazy Wave Riser)というライザーシステムを表す画像で,このライザーシステムと上部浮体との連成問題や,ライザーとトート係留を複合させた係留システムに関する検討も行っています。またライザーと海底との接触点におけるライザーシステムの疲労問題などは,重要な研究開発テーマとなると考えています。


新しい係留システムを採用した浮体構造物と波の相互干渉影響を考慮した運動応答特性把握
近年,浮体構造物は洋上風車や海上レストラン,浮体式のデーターセンターなど,様々な目的や産業に応じた多様な利用が進んでいます。そこで我々は左の図の弾性係留システムを用いた浮体構造物の係留方法について,その係留効果や係留設計に関する検討を行っています。弾性係留索は複数本束ねられたラバーロープとその上部に合成繊維ロープが接続される形で構成され,その特徴として,海域に合わせて調整することで,干潮時でも係留索が緩まず,満潮時にも破断せずに常に安定した支持力を得ることが可能で,弾性体部分に使用されるゴム材にはカーボンが充填されているため強度や弾性率が高まり,摩耗に対しても高い耐性を有する特徴があります。また近年では,保全係留としての注目が高まりつつあり,海底への影響が少ないことから生態学的観点でエコフレンドリーな係留方法として注目もされている係留方法なんです。
また浮体式洋上風力発電の係留装置の多くは大型チェーンによるカテナリー係留で検討されています。そこで我々は,そのチェーンの途中にブイやクランプドウエイトを取り付けることによる,より合理的な係留方法などについても研究を進めています。


ハイブリッドケーソン式防波堤(HBC)に作用する波力の算定と合理的なHBCの断面設計
HBCは鋼・コンクリートの複合構造であり,RCケーソンよりも軽量であるため1つのケーソンを長大化できてコンクリート工事を省力化も可能となるため大変優れた経済性を期待できるケーソンです。現在,HBCを設計する際,HBC下部に据え付けられたフーチングの上下面に作用する圧力は互いに打ち消し合うと考えられ,フーチングに作用する流体力を考慮せず設計が進められています。しかし今後,ケーソンの転倒防止効果や,自重の分散による軟弱地盤へ適用範囲を拡大可能な点を期待して,フーチングがより長く張り出すことが考えられます。そのためフーチング上下に作用する揚圧力と抑圧力など波圧の分布特性をより正確に把握して,HBCの断面設計に寄与する検討が求められています。
そのため,我々は流体解析方法の1つである粒子法を用いて,フーチングに作用する各種圧力の分布傾向や圧力変動などの特性を詳細に捉え,それら流体力の算定方法について設計指針などへの掲載を目指すとともに,HBCのより合理的な断面設計を提案可能な研究を進めています。


ジャケット式桟橋下の圧縮空気と波による揚圧力の解明
ジャケット式桟橋の床版には,高波浪あとそれに伴う空気の圧縮による揚圧力が作用する場合があり,これにより杭の引き抜きや床版の破壊を引き起こす可能性が懸念されています。そのため我々は床版と水表面間の圧縮気体による揚圧力と波力を同時に計算するため,圧縮性・非圧縮性流体の双方を取り扱い可能な粒子法の一つであるSPH法を用いて解析を行っています。


交差軸型風車の風荷重と起動特性
洋上風力発電に関する研究では,水平軸型風車や垂直軸型風車を対象とした検討が多く進められていますが,風向や浮体の動揺に伴い生じる風車の回転軸の傾斜が課題となり,風車の姿勢制御システムなどの導入が必要となっています。そのような開発状況の中で,浮体式交差軸型風車(FCAWT)が新たなる選択肢として株式会社OKYAにより提案されています。FCAWTは回転軸が風向に対して交差しているため回転軸の傾斜の影響を受けず,翼の受圧面積の変動も少ないので安定した発電を期待できます。さらに下図に示す「開閉式プレート(以下,プレート)」が取り付けられると,低回転時には重力により開き,受圧面積を拡大することで抗力型風車として起動性能を向上させることができます。このように起動特性に優れた風車は日本の様な低風速域における洋上風力エネルギーの利用を拡大させ,2050カーボンニュートラルの目標達成や地球環境問題の改善に大きく寄与することが期待されます。そのため我々は浮体式交差軸型風車の実現にむけて,風荷重の特性把握や起動特性に関する検討を進めています。またそれらの外力の効果を把握した上で,浮体としての動揺問題や係留方法などについても検討を進めていく予定です。


没水平板や潜堤を活用した津波遡上低減や波力発電装置の性能向上に関する検討
平板式構造物である没水平板を水面下に設置することで,その構造物の形状により波の進行方向を制御し,波を集めたり,発散させたりすることができます。そこで我々はまず波を発散させる機能を持つ構造物を海底に設置することで,景観の阻害や閉鎖感を地域住民に与えずに津波被害を軽減可能なのか検討を進めています。また次に波を集めることも可能であることから,波力発電装置の前に没水平板を設置した際の波力発電装置の性能向上も見込めるのかどうかについての検討も併せて行っています。

閉鎖された水域に設置された浮体式構造物のスロッシングに起因する運動応答
造船所のドックの再利用などにおいて,水の免震効果に期待して,閉鎖された水域に浮体式データセンターを設置する検討なども行われています。またこれまで使用されていた浮体構造物をメンテナンスのために閉鎖された岸壁に据え付けることもあり,このような閉鎖された水域に浮体が設置された際,地震などが発生すると場合によっては水面が強く揺れるスロッシング現象が生じ,浮体の運動応答の増幅も懸念されます。そこで我々は,浮体式構造物の地震動に起因するスロッシング現象に伴う浮体の運動応答特性を把握する研究を進めています。
修士論文タイトル
2023年度
"粒子法による没水平板の波浪集波効果に関する基礎的研究" 木下龍太郞
"弾性係留システムを適用した浮体式構造物の係留索諸元選定に関する基礎的研究" 菅原幹将
"浮体式交差軸風車の起動特性および風荷重特性に関する基礎的研究" 関口竣介
"ハイブリッドケーソン式防波堤の揚圧力と抑圧力算定に関する基礎的研究" 田村直輝
2022年度
"円筒形タンク内の非線形スロッシングに関する数値的研究" 李濟援
"浮体式交差軸風車に作用する風荷重に関する基礎的研究" 小岩立汰
"大変形理論による浮体の水平運動に依存する水中弾性管の運動応答解析" 髙野大輝
"高レイノルズ数域における円柱の流力振動に関する数値的研究" 佐藤拓己
"大規模災害時における避難者数の推計に関する基礎的研究" 塩島宇晶
"弾性係留システムの設定パラメータの選定に関する基礎的研究" 鈴木湧大
"浮体式垂直軸型風車に作用する風荷重の推定に関する基礎的研究" 成松青空
2021年度
"弾性係留索を使用した浮体係留システムに関する基礎的研究" 鹿島瞳
2020年度
"首都直下地震における主要医療施設との連携を考慮した災害時医療支援浮体の適地選定に関する研究" 下本瀬夏
"弾性係留索を用いた係留システムの大型貯蔵浮体への適用性に関する基礎的研究" 関口諒
"有限要素法によるジャケット式海洋構造物の損傷予測に関する基礎的研究" 西河内亮
2019年度
"大型石炭貯蔵浮体の石炭積載状態に応じた変形と塑性歪みに関する基礎的研究" 飯塚功二
"SLWRが接続する浮体システムの動的挙動解析" 海保紘大 [加藤賞]
"離島港湾における係留船舶の消波装置による動揺低減効果に関する基礎的研究" 木原寛明
"干潟域における浮遊を考慮した生態系(二枚貝)ネットワークに関する基礎的研究" 山口兼右
2018年度
"大型船舶が接舷された大型石炭貯蔵浮体システムの応答量に関する研究" 敷田曜
卒業研究タイトル
2024年度
"海底水深変化に対応した弾性係留システムの諸元選定に関する検討" 野呂明日美・赤木大晟
"没水平板を用いた規則波の集波効果に関する研究" 伊藤泰子・古川智尋
"不規則波浪場におけるハイブリッドケーソン式防波堤のSPH法による波圧特性" 川名響・小島優希
"ブイ・クランプウエイトを用いたチェーンカテナリー係留の浅海域における係留特性" 神田匠・根岸拓未
"ジャケット式桟橋下の圧縮空気と波による揚圧力の気液連成解析" 今悠紀
"閉鎖水域のスロッシングに起因する浮体式構造物の運動応答" 坂本彩乃・周嘉祥
"交差軸型風車の風荷重と起動特性に関する研究" 佐藤匠・藤澤佐翔
"SPH法を用いた大型平板式潜堤による津波遡上低減効果に関する研究" 望月優名・丸尾成央
2023年度
"粒子法によるハイブリッドケーソンに作用する波圧の算定" 阿部文哉・舩内柊志
"閉鎖水域のスロッシングに伴う浮体式構造物の運動応答" 紀藤菜桜・寺田拓海・葛西拓海
"粒子法による凸レンズ型没水平板の波浪集波効果" 佐々木暁成・西川由紀
"垂直軸型風車に作用する風荷重の特性把握" 松下毅・四宮夕芽花
"弾性体の特性変化に伴う弾性係留システムの係留設計に関する基礎的研究" 鈴木渉・野田有里子
"静止状態の浮体式交差軸型風車に作用する風荷重特性" 山川健介・加藤靖崇・須賀達樹
"第7鉱区における石油・天然ガス開発に関する調査研究" 渡辺裕一朗
2022年度
"円筒形タンク内の液面動揺に関する非線形解析" 池田大悟
"微小変形理論による浮体の水平動揺に基づくライザー管の運動応答解析" 金田良宣
"浮体式交差軸風車に作用する風荷重特性把握に関する基礎的研究" 韓吉爽・山本桂衣
"津波被災想定地域における避難者数の推計に関する基礎的研究" 佐藤哲哉
"弾性係留索の初期伸び率に関する基礎的研究" 宮崎涼・渡邉マイルズ
"浮体式垂直軸型洋上風力発電施設に作用する風荷重の推定" 森口翔登・山本海周
"浮体式構造物が設置された閉鎖水域のスロッシング解析" 中島啓貴・野村幸生
2021年度
"弾性係留索により係留された洋上風力発電施設の居住性能評価" 海老原圭・菅原幹将
"超大型浮体に接続する弾性係留索の係留条件に関する基礎的研究" 雄倉佐彩・野原さくら
"SCRの挙動と土壌との相互作用に関する基礎的研究" 大木誠也・北島大誠・木下龍太郞・新家裕登
"ジャケット式海洋構造物の損傷に伴う振動特性変化に関する基礎的研究" 関口俊介・土本和人
"ジャケット式海洋構造物の層剛性の同定に関する基礎的研究" 森田光奎・山名泰生
"東京湾における残存稚貝の成長過程の再現に関する基礎的研究" 田村直輝
"大規模災害時の建物倒壊による重傷者数の算定手法に関する基礎的研究" 吉田健人
2020年度
"ジャケット式海洋構造物の固有振動モードによる損傷箇所の推定" 稲生慎太郎・小岩立汰・成松青空
"波強制力が作用する超大水深型SLWRの応答特性" 岩田彗悟・髙野大輝
"GISを用いた災害時における主要病院の受入れ人数の算定に関する基礎的研究" 塩島宇晶・村山裕樹
"弾性係留システムの係留条件の変化に伴う大型石炭貯蔵浮体の運動応答特性" 鈴木湧大・立原直樹・盛一佑太
"東京湾における二枚貝生態系ネットワークの解明に関する基礎的研究~浮遊幼生の遊泳パターン解析と残存稚貝の成長モデルの構築について~" 西田阿偉斗・石王丸直哉
"運用時を想定した大型石炭貯蔵浮体の構造特性" 諸橋健太郎
2019年度
"大型石炭貯蔵浮体のモデル化に関する基礎的研究" 林誠之輔・赤羽佑斗 ・下地海人
"東京湾における二枚貝浮遊幼生の沈降着底に関する基礎的研究" 新井智大・田邊晴香
"首都直下地震における医療支援浮体の有用性に関する基礎的研究 ~医療施設間の連携を考慮した重傷者搬送シミュレーション" 石橋紀里・宇田川大輝
"弾性係留索によって係留された大型浮体の運動応答特性" 鹿島瞳
"係留船舶の消波装置の設置に伴う動揺低減効果に関する基礎的研究" 熊澤一樹
"超大水深型SLWRの構造特性把握に関する基礎的研究" 高嶋実和・齋藤和輝
"カテナリー係留された大型石炭貯蔵浮体の運動応答特性に関する基礎的研究" 吉田璃子
2018年度
"離島港湾における非接岸係留された係留船舶の応答特性と係留索張力に関する基礎的研究" 大野拓巳
"深海を活用した水素生産・貯蔵施設の電解水冷却システムに関する基礎的研究" 佐野敦紀・山口耕一郎
"GISによる災害時医療支援浮体の規模算定および適地選定に関する基礎的研究" 下本瀬夏・北畠佑一
"大型船舶が接舷された大型石炭貯蔵浮体システムの運動応答特性に関する研究 ~カテナリー係留された大型石炭貯蔵浮体の運動応答" 関口諒
"大型石炭貯蔵浮体に生じる塑性歪みに関する基礎的研究" 西河内亮・野尻連太朗
"大型石炭貯蔵浮体の動揺特性に関する基礎的研究" 立川潮・佐藤英仁